続・ふたりっ子の世界は実現するか: ルール設計の試み

前エントリーを巡ってコメント欄等でいくつかの貴重なご意見をいただくとともに、渡辺竜王のブログ(http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/23947db7a406ca346f0eb64747ad9922)からは、こんなフィードバックをいただいた。

梅田望夫さんも下記の記事を書かれています。

  • 里見さんの女流名人位獲得に思う。ふたりっ子の世界は実現するか。(梅田望夫のModernShogiダイアリー)

女流棋界制覇を目指す中で力を付けて、対男性棋士の勝率も上がり、気付けば6割5分というのが理想的な展開でしょうか。里見さんはまだ女流棋士の中で飛び抜けたわけではありませんが、年齢を考えるとこれに最も近い存在、と期待されるのも当然と言えます。今春には高校を卒業して将棋に接する時間が増えるでしょうから、どこまで強くなってくれるのか、楽しみですね。

現在のルールの問題点は、そのルール記述の曖昧さゆえに(本来アマチュア強豪のために用意した制度に「女流棋士も同じように適用できる」としたために曖昧?)、渡辺竜王の言うような「女流棋界制覇を目指す中で力を付けて、対男性棋士の勝率も上がり、気付けば6割5分というのが理想的な展開」と仮になったときに、里見さんが同時にその後も続けて女流棋界で活躍できるのかが明記されていない点だろう。
フリークラス入りしたらただちに女流棋士であることを放棄しなければならないというルールなのであれば、センプレ・アタッコさんの「(おそらく)女流棋戦が指せなくなる代償を払ってまでフリークラスに編入するメリットはあるのか?」という指摘は的を射ている。
また、そのあたりの曖昧さを早い時期に払拭しておいたほうが良いのではないかというコメント群には、私も共感する。そこでちょっと考えてみた。
以下のようなルール設計をするのは、どんなものだろうか。

女流棋士がフリークラス編入試験受験資格を得て、さらに編入試験に合格した場合には、女流棋士としての活動を続ける自由は担保しつつ、フリークラス棋士に与えられる権利が付与される。

フリークラス棋士に与えられる権利は、具体的には、

  • 順位戦を除く公式戦各棋戦へフリークラス棋士として(女流棋士枠からではなく)参加する権利
  • 公式戦での勝率如何で瀬川さんのように順位戦C級2組に上がれる権利
  • 各棋戦である期に活躍して得られるシード権やリーグ戦に残る権利(詳しくは知らないが、アマチュア女流棋士は公式戦のある期にある程度活躍して次期シード権やリーグ残留を決めても、次の期は再びアマチュア枠または女流枠でいちばん下から戦わなければならないというのが現状ではなかったかと思う)

が与えられるとするのである。どんなものでしょうね。
現時点で女流棋士奨励会入りした場合、女流棋士としての活動を休まなければならないというルールがある。これは「奨励会員との間の不平等の是正」というのが理由だったように記憶している。しかし編入試験はアマチュア強豪(奨励会経験者)にも開かれたものだし、それに合格した場合は「一つの別の職業としての女流棋士」との両立をはかるのは自由、というのは一つの落とし所ではないかと思われる。厳密に論理を詰めていったときに、このルールでは「女流棋士からプロ棋士へというルート」が、プロになるための他のルート(奨励会、アマチュアから編入試験)に比べて少し甘いという意見も出るかもしれない。しかしそこは、将棋普及のために歴史の浅い女流棋界というフロンティアを開拓して発展させることも含めての施策だ、と考えればよいのではないか。
忌憚なきご意見をいただければと思います。

追記。本エントリーについての渡辺竜王のご意見。
http://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/4437a458be0ba326871dcf4bac9e814a