先崎学八段の将棋評論

衛星版で購読している日経新聞にいま掲載されている王座戦の観戦記(清水大石戦)が先崎学八段の手によるものである。将棋も強く将棋界にもおそろしく詳しい友人(編集者)の持論は、「すべての将棋は、先崎さんによって解説されるべきだと僕はひそかに思っている。盤上で起きていることの本質を掴んで、それを言葉にする能力において彼が圧倒的にすぐれているからだ」である。
11月26日付けの第3譜に、現代将棋を巡ってこんな文章があった。

中飛車が流行するようになってから、どうもプロ棋士の序盤は雑になった。二十数年前、居飛車穴熊が大流行した時期にも同じような現象があったが、居飛車穴熊というものは、はっきりと優秀な戦法であったために、それを阻止しようというところにさまざまな工夫ができ、将棋界は大きく前進した。だが今の中飛車ブームはそれとは違い、序盤戦術、ひいてはプロのレベルの向上には結びつかないだろう。

新聞観戦記だと字数の関係から端的な表現にならざるを得ないのだろうが、こういう結論に至るロジックや感性を綴った彼の長い文章を、延々と読んでみたいと思う。勝又教授の現代将棋論とはまた一味違った将棋評論が読める予感に満ちている。
そうそう、この感謝祭休暇では、毎号愛読していた「将棋世界」連載の「千駄ヶ谷市場」(2006年9月号から2008年8月号まで)を、改めて第一回から順に一つずつ読んでみることにしよう。

二年ちかく書き連ねてきたこの欄だが、誠に申し訳ないが、今月で終わりとさせていただきたい。
特に理由はないのだが、プロがプロの将棋を書くというのは、意外としんどいものだった、というのが正直な感想である。(「将棋世界」2008年8月号)

という言葉を最後に終ってしまった連載、「しんどい」ことであるかもしれないけれど、是非またいつか復活してほしいと切に願う。